（５）清九郎の血縁について

▼清九郎には「小萬」といふ独り娘あって、養子に久六といふ者を迎へたが、二人の仲に子供の出来ぬうちに小萬が病死した（時に小萬廿六歳）。婿久六は再び後妻を貰はず、舅清九郎と共に専心佛道に志を寄せ、清九郎の没後もよくその志を継ぎ、人々の感称を得た……と　【崑崙実録】　【和州清九郎傳】【孝信清九郎物語】　に記されてある。かくて、久六には後嗣の無きまゝに、その血縁は絶えた　訳詳で、今はその住居せる屋敷跡も定かでない。たゞ【和州清九郎傳】に「……住居せし家より十間ばかり右の方に墓を築く…‥」と、書かれてあることから推して、現存する清九郎の墓の十間ばかり傍らの、大凡この辺りならんと思はるゝ所あるばかり。

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▼叉、清九郎の父母のこと．妻のことはその名前も没年も詳らかならず、久六の没年も亦明らかでない……（記録・墓碑・その他何の証憑も残らず）



（６）　清九郎の没年は　　　＝七十三歳＝

【崑崙実録】　【孝信清九郎物語】　【妙好人傳】の三書には清九郎の没年を「寛延三庚午歳、八月四日、七十三歳」とあり。　（寛延三年は昭和十二年より百八十八年前）

　然るに【和州清九郎傳】には「寛延三年庚午歳八月四日」（これは前項と同じ）「七十四歳」と記す。　但し、これは「七十三歳」が正しいのであつて、察するに【和州清九郎傳】が「七十四歳」としたのはその著者の誤算によること言ふまでもない　何故ならば、同書の「発端」の章に「延宝六年戌午のとしにあたり出生……」　（延宝六年は昭和十二年より二百六十　年前）とあり、、延宝六年戊午歳は皇紀二三三八年にして．没年「寛延三庚午歳」は二四一〇年であるから、之れを算年するならば、当然「七十三歳」となること明らかなり。

　　　　　　　執筆者　喜　多　村　順　司